光宙(ぴかちゅう)・黄熊(ぷう)・龍飛伊(るふぃ)…キラキラネーム等の当て字・振り仮名は日本の文化?日本語の漢字と振り仮名の関連性

キラキラネーム

キラキラネームに通じる、当て字と振り仮名、日本語の成り立ち

キラキラ

「名前は人を表す」

だからこそ、名前は安易につけてはならないと思います。

しかし、最近キラキラネームと呼ばれる、どうやって読めばいいのか分からない名前が増えてきました。

「キラキラネーム」という名称も面白いもので、

難解な読み方だから読めないのか、華美な漢字を使いキラキラと眩しくて読めないのか…

いずれにせよ、そんなキラキラネームを見ると

「近頃の若い者は…」と言いたくなる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 

ですが、それは最近だからこそ増えてきたのでしょうか?

キラキラネームで頻繁に槍玉に挙げられる漢字の当て字と振り仮名。

それらの使い方を調べると、「日本語」の成り立ちまで遡ります。

それらを理解すると、キラキラネームを見て、少しだけ「なるほどな」と思えるかもしれません。

キラキラネームに限ったことではありません。

世の中に出回る現代の漢字の振り仮名に憤りを感じる方もいらっしゃるかもしれません。

そんな方の為に、日本語の成り立ちから当て字と振り仮名の関係性を紐解いてみようと思います。

少し長いのですが、お付き合いいただけると、少しだけ胸がスッとなるかもしれません。

では、日本語の成り立ちについて、まずは漢字の説明から始めましょう。

いつ漢字は日本に伝わってきたのでしょうか?

コンパスと地図

漢字が中国から伝わってきたのはご存知だと思いますが、

さて、漢字はいつ頃日本に伝わってきたのでしょうか?

正確には分かっていないようなのですが、

2世紀〜5世紀にかけて徐々にもたらされたと考えられているそうです。

『日本書紀』の記述では、応神天皇の時代(4世紀末〜5世紀初頃)伝わったとされています。

もっとも古いところでは、2世紀中頃の遺品に漢字らしきものが確認されています。

漢字が伝わる前までの言葉は日本にあったのでしょうか?

では、漢字が中国から伝わる前まで日本には言葉があったのでしょうか。

実は、漢字が伝来してくる以前から言葉がありました。

古代の日本人が話していた日本固有の言葉を「大和言葉(やまとことば)」と言います。

和語(わご)」とも言います。

恐らく、テレビや書店で大和言葉という言葉をよく見かけると思います。

明治大学文学部教授で『声に出して読みたい日本語』の著者の齋藤孝先生も

『声に出して使いたい大和言葉』という著書を出版されています。

 

そんな大和言葉ですが、実はその当時は話し言葉であって、書き言葉はありませんでした。

漢字より書くのが簡単な平仮名や片仮名があったのでは?とお思いの方もいらっしゃるでしょうが、

言わずもがなかもしれませんが、漢字から平仮名や片仮名が出来たので、

話し言葉である大和言葉を書き表す言葉はありませんでした。

 

そこへ2世紀〜5世紀にかけて漢字が伝来しました。

日本人は漢字が伝来してから、ただ中国の漢文をそのまま吸収するのではなく、

漢字を日本語に合わせて日本式にアレンジしていきました。

漢字の音や意味を巧妙に駆使して、日本語を自然に書き記す術を見出していったのです。

 

ということで、

「日本語」は話し言葉である「大和言葉」が古代より使われていて、

後から漢字が中国から伝来し、書き言葉として使うようになったのです。

 

漢字と振り仮名の関係とは?

そのような成り立ちが「日本語」にはあり、

漢字の伝来以降、万葉仮名が生まれ、平仮名・片仮名が生まれるのです。

 

ただ、どんな時代でも漢字の読み方に苦労するもので、

漢字の読み方を示す「振り仮名」という仕組みが日本語に生まれたのです。

書いた文字にわざわざルビを振るという仕組みは他の言語には御座いませんので、

極めて日本語特有の文化だと思います。

 

その振り仮名は単に漢字の読み方を示すだけではなく、それ以外にも機能があるのです。

書き手がある種自由な振り仮名を振って、文章表現として独特のニュアンスを出すことがあるのです。

最近の振り仮名

ここ数年でライトノベルと呼ばれるジャンルの小説が人気を博し、

その中でも一際目を引いたライトノベルのタイトルが

鎌池和馬の著書である『とある魔術の禁書目録』です。

これは『とある魔術の禁書目録(インデックス)』と読むのです。

目録(もくろく)が本来の読み方ですが、

目録と同義の「index(インデックス)」という英語を振り仮名として使用したのです。

(禁書の部分は英訳せず、振り仮名にも加えていないようですが、それ以上踏み込みません)

これは いわゆる「最近の言葉の乱れ」なのでしょうか? そんなことはございません。

明治時代にもあった 面白い振り仮名

本棚

『我輩は猫である』『こころ』『三四郎』の著者である明治の文豪の夏目漱石は

『それから』という著書の中で面白い振り仮名を付けていました。

「幻像」「哲理」

さて、この言葉に付けた振り仮名は何だと思いますか?

「幻像(イリュージョン=illusion)

「哲理(フィロソフィー=philosophy)」

正解は上記の英訳でした。面白いですよね。

「幻像(げんぞう)」とは「実際は無いのに、有るように見える形・姿」

「哲理(てつり)」とは「哲学上の学理。特に、人生・世界の本質を見通した、奥深い道理」

(いずれも、新明解国語辞典より)

それを同義の英語を読み方として当てはめたのです。

ライトノベルを軽視したり偏見を持ったりしている方もいらっしゃるかもしれませんが、

明治の文豪である夏目漱石も英語を振り仮名として使用していたのです。

英語の振り仮名以外にも夏目漱石は

「判然(はんぜん)」と書いて「はっきり」と読んで欲しいが為、

あえて「判然(はっきり)」という振り仮名を使用しました。

他にも沢山の振り仮名を付けているので、興味がある方は是非調べてみてください。

振り仮名は自由に使ってもいいのでしょうか?

夏目漱石が振り仮名を自由に使っていましたが、

通常の振り仮名に加え、このような自由な振り仮名の使い方が発生したのは

室町時代の頃と考えられています。

当時の辞書には下記のような読み方を示していました。

「騒動」→「そうどう」「さわぐ

「蹂躙」→「じゅうりん」「ふみにじる

なぜ自由な振り仮名が発生したのでしょうか?

 

先程も説明致しましたが、日本語を書くときの出発点には話し言葉(大和言葉・振り仮名)がありました。

元々 話し言葉だった大和言葉に対し、中国から伝来した漢字を当てはめ、書き言葉を作ったので、

「話し言葉(大和言葉・振り仮名)に対して適当な漢字を探して当てはめる」という手順がありました。

 

そして、時間とともに ある程度 漢字が日本語の中で安定的に用いられるようになったのですが、

室町時代の頃に再び大量の漢字が日本語に入ってきた為、

書き手は振り仮名に対してまた新しい視点から漢字を当てはめるようになったのです。

そういった経緯の中で振り仮名と漢字の比較的自由な関係が生まれたのです。

 

今も進化を続ける現代の漢字の振り仮名

『「本気」と書いて「マジ」と読む』なんて言いますが、

『「マジ」と読んで「本気」と書く』とも言えますよね。

「刑事(デカ)」「不良(ワル)」「理由(ワケ)」等、枚挙に暇がありません。

 

自由な振り仮名は今も進化を続けています。

漢字に対して自由な振り仮名を付け、振り仮名に対して自由な漢字を付ける。

どちらが先という意識も曖昧になるくらい、

それらを考える人は独創性を持って同時に考えているのかもしれません。

当て字と振り仮名のオンパレード「キラキラネーム」

キラキラ渦巻き

名前を考える時は「呼びたい名前・名乗らせたい名前」を付けますので、

「書く」よりも「話す」に比重を置くものだと私は思います。

キラキラネームでは、一般的な感覚よりも「話す=音」に比重をより多く置いているのだと思います。

光宙(ぴかちゅう)

タイトルにも載せました「光宙(ぴかちゅう)・黄熊(ぷう)・龍飛伊(るふぃ)」。

「ピカチュウ」は口にするだけで可愛い音が沢山入っている名前ですよね。

「ポケットモンスター」の生みの親である田尻智さん曰く、名前の由来は下記の通り

「ピカチュウの名前の由来は光が弾ける時の「ピカ」と、ネズミの鳴き声の「チュウ」の組み合わせである」(引用元:https://ja.wikipedia.org/wiki/ピカチュウ)

という意味では、漢字を当てはめる時に「光」という漢字を付ける意味も合点がいきます。

黄熊(ぷう)

「黄熊(ぷう)」はディズニーでお馴染みの「くまのプーさん」が由来でしょう。

「プー」も同様に発音が可愛らしいですよね。

「くまのプーさん」は黄色の熊のぬいぐるみなので、

それを漢字で表して当てはめるなら「黄色の熊=黄熊=プー」となったのでしょう。

龍飛伊(るふぃ)

そして最後に漫画・アニメ「ONE PIECE」でお馴染みの「モンキー・D・ルフィ」が由来でしょう。

ルフィは「ゴムゴムの実」という悪魔の実を食べたゴム人間で、

ゴムの特性を生かして飛び回る描写があるので、

「龍のように飛び回る」という意味で

「龍(りゅう)」と「飛(ひ)」を当てはめ、「伊」は数合わせ的に使用したのか、

「りゅう+ひ+い → るひい → 龍飛伊(るふぃ)」となったのではないでしょうか。

 

すみませんが、説明がし易そうなキラキラネームを選びましたが、

上記のような考え方で、名前の振り仮名に漢字を当てはめるのだと思いました。

キラキラネームの付け方を考察してみました。

ついでなのですが、私が考察したキラキラネームの付け方をまとめてみます。

【キャラクタータイプ】

①モチーフ・モデルとなるキャラクターを選ぶ。

・子どもになって欲しいもの(EX.モンキー・D・ルフィ)

・音が琴線に触れたもの(EX.くまのプーさん、ピカチュウ)

②キャラクターの特性を抽出して、特性を表す漢字を考える。

(EX. ルフィ→ゴム人間で自由に飛び回る→龍・飛
プーさん→黄色の熊のぬいぐるみ→黄・熊
ピカチュウ→光の弾く音、ネズミの鳴き声→光

③キャラクターの名前の音に近く、且つ特性を表す漢字を当てはめる。(EX. ピカチュウ、ルフィ)

OR キャラクターの名前の音に遠くても、特性を表す漢字を当てはめる。(EX.プーさん)

キラキラネームのタイプ分け

このタイプ以外にも様々なタイプがありそうなのですが、

非常に多種多様で骨が折れそうなので細かい説明はやめておきますが、

『キラキラネーム一覧!まさかの実在、男の子女の子の名前』

には沢山のキラキラネームが紹介されていたので、そちらから抜粋させていただきました。

上記サイトとは違う、漢字を当てはめるという観点からタイプ分けをしてみようと思います。

【キャラクタータイプ】

黄熊(ぷう)→「くまのプーさん」のプーさん(黄色の熊のぬいぐるみ)
♂詩羽楊(じばにゃん)→「妖怪ウォッチ」のジバニャン(猫の地縛霊)
♂光宙(ぴかちゅう)→「ポケットモンスター」のピカチュウ(電気タイプのねずみポケモン)
♂瑛磨(えーす)→「ONE PIECE」のポートガス・D・エース(メラメラの実の能力者)
♂龍飛伊(るふぃ)→「ONE PIECE」のモンキー・D・ルフィ(ゴムゴムの実の能力者)
♂是留舵(ぜるだ)→任天堂ゲーム「ゼルダの伝説」のゼルダ(ハイラル王国の王女)
♀泡姫(ありえる)→「リトル・マーメイド」のアリエル(人魚)
♀闘女(きゅあ)→「プリキュア」(少女たちが戦闘を繰り広げる物語)

【ブランド名タイプ】

♂美俺(びおれ)→花王株式会社の「ビオレ」(スキンケアブランド)
♀紗音瑠(しゃねる)→「 CHANEL(シャネル)」(ファッションブランド)

【響きから漢字を比較的分かりやすく当てはめた造語タイプ】

♂歩木鈴(ぽこりん)
♂弟吾琉(である)→アデル(Adele)なら外国人名であったのですが、デアルはありませんでした。
♀音音(のんのん)
♀心中(ここな)
♀理想女(りそな)
♀姫羅梨亜(きらりあ)

【外国人名の響きに漢字を当てはめたタイプ】

♂飛悟(ひゅーご)→Hugo
♀南椎(なんしー)→Nancy
♀乃絵瑠(のえる)→Noel

【英単語の意味を漢字で当てはめたタイプ】

♂楽気(らっきー)→Lucky
♂生粋(しぇいき)→Shake?
♂月男(るなお)→Luna
♂誕生(ばーす)→Birth (day)
♂主人公(ひーろー)→Hero
♂在波(あるは)→α=alpha
♂騎士(ないと)→Night
♀碧(あくあまりん)→Aquamarine
♀良妃(らびん)→Love’n(Love in)
♀月姫(らめ)→Lame(フランス語)
♀愛舞(いぶ)→Eve
♀月々奈(るなるな)→Luna
♀未羅乃(みらの)→Milano(イタリアの地名)
♀手洗(てぃあら)→Tiara
♀愛羅(てぃあら)→Tiara
(イタリア語で「愛している」は「Tiamo」なので「愛」を使用しているのでは?)

【漢字と読み方が自然なのだが、人名として不自然なタイプ】

♂大麻(たいま)
♂甲子園(こうしえん)

 

様々な名前があり、分類もひと苦労しました…。

どんな言葉から由来があるのかを考えて見ると面白いものでした。

それこそ「なるほどな」となりました。

しかし…読み仮名がないと「なるほどな」とはなりませんね。

せめて、ギリギリ読める程度に留めてもらえるといいですよね。

 

最後に

my name is

漢字を当てはめるという作業から考えると、

キラキラネームの付け方は理にかなっている部分もあります。

【外国人名系】とかは、国際社会ですし、許容されやすいと思います。

 

しかし、やっぱりキラキラネームは、

発想が短絡的・短期的だったり、

名前の読み手・使い手(子ども)への配慮がなかったり、

人名に不向きかどうかの判断が欠けていたり、

奇を衒(てら)った奇抜過ぎたりしていて、

漢字が当てはめるとか、そういう段階より以前の問題だと思いました。

 

この記事を読んでみてから、どこかでキラキラネームを見かけた時、

当てはめた漢字に対して「ああーなるほどね」と理解を示そうとしていただけようになると

私としては記事を書いた甲斐があると思え、冥利に尽きます。

これからも様々な名前が生まれるのでしょうから、少しずつ受け容れられるようになりましょう。


参考文献

沢辺 有司『日本人として知っておきたい 日本語150の秘密』出版社: 彩図社 (2016/7/25)

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